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皆でかなえる、皆で繋がる
『視線入力によるコミュニケーション支援について』
すっかり涼しくなり、休日のお出かけが待ち遠しい季節となりました。
作業療法士の永吉琢也です。
今回のブログでは、まだ全国でも使っておられる方が少ないと思われる、
あるご利用者のコミュニケーション方法を紹介したいと思います。

私が担当しているM様は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という病気を
患っておられる60代の女性です。
ALSという病気は、身体を動かすための神経系(運動ニューロン)が変性し、
その結果として筋肉が萎縮していく進行性の神経難病であり、
現在我が国には約8,400人の患者さんがおられると言われています。
私がM様の訪問リハビリを担当させて頂いて、もう5年近くになります。
この間徐々に筋萎縮の症状が進んでいき、現在は上肢の一部と顔の筋肉
(表情筋や口の周り、目の周りの筋肉)しか動かせず、
発声も困難な状態になっています。
まだ指が動かせていた頃に左母指で操作できるスイッチと
「伝の心」というコミュニケーション支援機器を導入しましたが、
今では指の操作も困難となり、左腋を締める形で
肘の内側を使ってスイッチを押しておられます。
ご家族を呼ぶ時のコールスイッチは、
今もこの方法で押せているものの、伝の心の操作については、
入力方法の変更とともになかなか使いにくい状態となっていました。

そんな折、M様の息子さんがネット上で
「視線入力」によって伝えたい言葉を綴る方法を探してこられました。
元々視線入力によるコミュニケーション支援機器としては
「マイトビー」というものがあるのですが、高価な製品(約150万円)で
誰もが気軽に試せるものではありません。
筋萎縮の症状が進んでも眼球運動が保たれやすいALSの方にとって、
視線入力によるコミュニケーション支援機器は希望される方が
多いにもかかわらず、特例補装具扱いとなり身障手帳を使って
補助を受けるのもなかなかにハードルの高い状況です。
このマイトビーにはモニター画面の下に患者さんの視線を感知する
センサー部分があり、これが視線入力の要となっています。
実は、このセンサー部分だけが海外で販売されており
(Tobii EyeX Controller:価格は約1万数千円)、
そのセンサーと「ハーティーラダー」という無料ソフトを組み合わせることで、
昨年11月から比較的安価に「視線入力によるコミュニケーション」
が行えるようになりました。

「視線入力対応版HeartyLadderとHeartyAiを公開」
http://heartyladder.net/xoops/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=22

この方法をネットで調べてこられた息子さんが、
自費で海外から機器を取り寄せて、
先日ご自宅のPCに接続してくださったのです。
(私も以前から注目していた方法ですが、公的な補助が受けられず
実費になること、海外製品で動作保証やアフターフォローがないこと、
眼の疲労等に十分注意しないといけないこと、さらにまだALSの方でも
実例が少なく本当に使えるものなのか半信半疑のまま、モノもないために
なかなかご利用者に勧めることもできない状況でした)

10月永吉さんブログ1

モニターが横向きになっていますが、この方はいつも頭部だけ
左向きの姿勢を取っておられるため、ベッドを軽くギャッジアップした状態で、
左側に設置したモニター画面が見れるように設定されています。
モニターのWindows画面の下で赤く光っているのが、
視線を感知するセンサー(Tobii EyeX)です。

10月永吉さんブログ2

これが実際に操作しているハーティーラダーの画面で、
「ま」の字を見つめて確定したところです。
見つめた「ま」の字が、網掛けの黄緑色に変化しているのが分かると思います。
このように50音表上の文字を見つめて、まばたきすることで
確定する設定になっています。
実際に操作してもらうと、スイッチで入力する伝の心よりも
速いスピードで文字入力が行えており、
ご本人にとってもかなり快適なようです。
環境を整えて下さった息子さんに感謝しながら、
ご本人の眼の疲労に注意しつつ、より楽に正確に視線で入力できるように
工夫・支援していきたいと考えています。

※今回の視線入力装置の話は、どんな病気の患者さんに対しても
使えるものではなく、また同じALSの患者さんであっても
病状によっては導入困難な場合があります。
一般的な補装具のような公的補助が使えず、
動作等の保証やアフターフォローもないということを考慮した上で、
身近な療法士等に相談の上、導入を検討してください。


作業療法士 永吉琢也
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