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医療従事者に求められるコミュニケーション能力について
すっかり春らしい温かい季節となりました。
作業療法士の永吉琢也です。
今回は、一冊の本を紹介して、私たち医療従事者に求められる
コミュニケーション能力について考えてみたいと思います。

永吉さん4月分


「わかりあえないことからーコミュニケーション能力とは何か」
(講談社現代新書、平田オリザ著)
以下、本文より印象に残ったところを抜粋します。

わかりあえないところから出発するコミュニケーション
というものを考えてみたい。そして、そのわかりあえない中で、
少しでも共有できる部分を見つけたときの喜びについても語ってみたい。
 (P5)

医療や福祉や教育の現場で、多くの有為の若者たちが、
「患者さんの気持ちがわからない」
「障害を持った人たちの気持ちが理解できない」と
絶望感にうちひしがれて、この世界を去っていく。
真面目な子ほど、そのような傾向が強い。
患者さんや障害者の気持ちに同一化することは難しい。
同情なぞは、もってのほかだ。しかし、患者の痛みを、
障害者の苦しみや寂しさを、何らかの形で共有することはできるはずだ。
私たち一人ひとりの中にも、それに近い痛みや苦しみがきっとあるはずだから。
 (P198)

私は、これからの時代に必要なもう一つのリーダーシップは、
こういった弱者のコンテクストを理解する能力だろうと考えている。
社会的弱者は、何らかの理由で、理論整然と気持ちを伝えることが
できないケースが多い。いや、理論整然と伝えられる立場にあるなら、
その人は、たいていの場合、もはや社会的弱者ではない。
社会的弱者と言語的弱者は、ほぼ等しい。
私は、自分が担当する学生たちには、論理的に喋る能力を
身につけるよりも、論理的に喋れない立場の人びとの気持ちを
くみ取れる人間になってもらいたいと願っている。 
(P183)

コミュニケーションをとる2者の間では、その関係性、
背景や状況に対する認識が共有・同意されていなければ
会話が成立しません。
このような、コミュニケーションを成立させる共有情報をコンテクスト(背景)といいます。
つまりここで言われる弱者のコンテクストとは、
患者さんやご家族の背景や置かれている状況のことであり、
私たち医療従事者に求められるコミュニケーション能力とは、
患者さんやご家族のコンテクストを知り(ときには推測し)
そこで日々抱く彼らの気持ちをくみ取れる能力ということになります。
このあたり、ものすごく納得!です。
さらにもう少し抜粋します。

私の同僚の医療コミュニケーションの専門家から聞いた話。
ホスピスに末期癌の患者さんが入院してきた。
50代の働き盛りの男性で余命半年と宣告を受けている。
奥さんが24時間、つきっきりで看護をしている。
さて、この患者さんに、ある解熱剤を投与するのだけれど、
これがなかなか効かない。
奥さんが看護師さんに「この薬、効かないようですが?」と質問をする。
ホスピスに集められるような優秀な看護師さんだから、
患者さんからの問いかけには懇切丁寧に説明をする。
「これは、これこれこういう薬だけれど、こちらの他の薬の副作用で、
まだ効果が上がりません。もう少し頑張りましょう」
奥さんはその場では納得するのだが、翌日も、また同じ質問をする。
看護師さんは、また親切に答える。
それが毎日、一週間近く繰り返されたそうだ。
やがて、いくら優秀な看護師さんでも嫌気がさしてくる。
ナースステーションでも、「あの人はクレーマーなんじゃないか」と問題になってくる。
そんなある日、ベテランの医師が回診に訪れたとき、
やはりその奥さんが、「どうして、この薬を使わなきゃならないんですか?」
とくってかかった。
ところが、その医師はひと言も説明はせずに、
「奥さん、辛いねぇ」
と言ったのだそうだ。
奥さんは、その場では泣き崩れたが、
翌日から二度とその質問はしなくなった。
要するに、その奥さんの聞きたかったことは、
薬の効用などではなかったということだろう。
「自分の夫だけが、なぜ、いま癌に冒され、
死んでいかなければならないのか」を誰かに訴えたかった、
誰かに問いかけたかった。
 (P178〜179)

私も医療従事者の端くれとして、患者さんやご家族の
コンテクスト(背景)を理解して、
表面にはなかなか表れない思いや気持ちまで
くみ取れるようになりたいものです。

この本、医療従事者に限らず、ぜひ一読を。
コミュニケーション能力、「対話」の言葉、コンテクストなど、
コミュニケーションというものを考えるうえで大切なことが書かれており、
おそらく読む方によって、それぞれ違った切り口の発見がある良書だと思います。

作業療法士 永吉 琢也

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